主人公のアン・シャーリーは、駅舎の前でたたずんで待っていた。
喜びに満ちた未来ある迎えが来ることを。
生まれてから不幸続きだったが、今度こそ幸せになれると信じて!

かたや、迎えに向かった、グリーンゲイブルズ(カスバート家の屋号:緑の切妻屋根)のマシュー・カスバート(兄)は、老兄妹のマリラ・カスバート(妹)と二人暮らし。
人付き合いが大の苦手で、特に子供が苦手だったが、孤児院(現:養護施設)から、農作業に役立つであろう男の子を迎えるため、普段の作業着ではなく、キリっと正装をして駅に向かっていた。
まさか女の子が待っているとは、これっぽっちも考えていなかった。

マシューは、汽車の到着予定時間から遅れて到着したが、待合室には誰もいない。
駅長さんに聞いてみたら、駅舎の外で景色を嬉しそうに眺めながら待つ少女を指して、あの子だと言った。
スペンサー夫人が、孤児院から、グリーンゲイブルズへ連れてきたのは、紛れもないあの子だと!

マシュー・カスバートが、驚いたのはいうまでもない。
何がどうなって、こういうことになったのかサッパリわからない。
男の子を希望して頼んでおいたのに、どう間違って、女の子が来てしまったのか???

さて、この状況をどうしたものかと思いあぐねていたら、アンの方から声をかけてきた。
「グリーンゲイブルズのマシュー・カスバートでいらっしゃいますね!」
その通りだとマシューが答えると、立て板に水が流れるごとく、アンは今日のこの日を心待ちにしていた喜びを、息つく間もなく話し出したのだ。
ここで悩んでいてもしかたがないマシューは、アンにはこの行き違いの事実を伝えず、とりあえず馬車に乗せて、グリーンゲイブルズへ向かった。

グリーンゲイブルズへ向かう途中も、アンは夢の中にいるかのように話し続け、身体全体で悦び(喜び以上のよろこび)を表現していた。

アンは、いろいろな物にステキな名前を付けるのが得意なのだが、まず最初に出会った場所は、春にリンゴの花が満開に咲き乱れた、並木道となっている白い花のトンネルのような道だった。

『喜びの白い道』

それは、アンにとっては、これまで見たこともない素晴らしい景色への感動の表現だった。

そして、アンにとって、これからの自分の家となるであろうと信じてやまないグリーンゲイブルズが近づいてくるのだった。
マシューにとっては、これから辛い現実を突きつけられ、どん底に落とし入れるかもしれない恐怖を思いながら、この少女の卓越した、実に心を引き付けられるアンを引き取ることはできないものかと、密かに思いあぐねていた。
それは、グリーンゲイブルズにいる妹であるマリラ・カスバートの性格を知っていたからだ。
マリラはマシューとは違い、超がつくほどの現実主義で、頑固な性格なのだ。

これから向かうグリーンゲイブルズへの道は、アンにとっては夢の自分の家として、ときめく気持ちでいっぱいで、かたやマシューは、これから起こるであろう辛い真実へのやるせない気持ちでいっぱいの道のりだった。

同じ、胸いっぱいでも、真逆の状態だったのだ!!!