グリーンゲイブルズへ向かう道は続いていた。

アンの夢見心地は続いており、白いドレスを身にまとったような、しだれた花が満開の木に感嘆し、キラキラ光る水面の美しさに悦びを感じ、

『きらめきの湖』

と、またしても、気に入ったものへの、お得意の名付け親となった。

その地では“バリーの池”と呼ばれる、バリー家の前に広がる、マシューいわく、ただの池だった。

話しはそのバリー家のことに移り、アンはそこに自分と同じ年頃の子がいるかとマシューに尋ねたら、ダイアナという、アンと変わらぬ年頃の子がいると答えた。

「ダイアナ・・・なんて素敵な名前なんでしょう!!!  “月の女神”という意味ね!」

もうそれだけで、アンは、そのダイアナが腹心の友(大親友)になることを直感したのかもしれない。

マシューがバリー家の向こう側がグリーンゲイブルズだと告げると、どの家がそれかを指し示すのをさえぎって、アンは家いえを見渡し、一発で当ててのけた。

アンにとっては、これからの自分の家となるであろう、夢いっぱいで明るい未来と信じる家なのだ。

マシューとアンは、ついにグリーンゲイブルズに到着した。

期待に胸をふくらますアンに対して、マシューは不安な気持ちでいっぱいだった。

「マシュー・カスバート! これはどうしたことかねえ!! 男の子はどうしたんですか!!!」

このマリラの一言で、アンは何もかも悟った。そして、どん底に突き落とされた現実を知った。

「私を必要としてくれるところは、どこにも無いんだわ!!!」

泣き崩れて、マリラに食って掛かった。

マリラは冷静にことを進め、まず名前を聞くと・・・

「コーデリアと呼んでくださらない!?」

マリラには、その返事の意味がわからない。

それもそのはず!アンにとっては、“コーデリア”がすばらしくエレガントで、自分の名前がこうであってほしいという想像の名前だからだ。

超がつくほどのマリラにとっては、「バカバカしい!!!」の一言でかたずけられる代物で、現実を悟ったアンが孤児院へ突き返されるまでの短いあいだのせめてもの希望すらかなわず、“アン”という名前は良い名前だと言い聞かせられ、アンの妥協点はこうだった。

「せめて、“e”のつく、“Anne”と呼んでください。」

話しは反れるが、私自身も子供の頃“紀子”ではなく、“千寿(ちひろ)”だったらいいのになあ!と思ったことがある。

私の場合、想像ではなく、身近な憧れの友達で、名前そのものに良いイメージを重ねての希望の名前だったのだ。

だから、アンの、たかが名前ごときにこだわりを持つ気持ちが、少しばかりわかる気がする。

マリラは渋々承知した。

アンは、極度に沈んだ気持ちで食事も喉を通らず、マシューの気遣う一言・・・

「この子は疲れているだろうから、寝かせてやってはどうかのう!」

とマリラを促し寝床へと案内するが、アンにとっては明るい夢の寝床となるはずが、その真逆のどん底の寝床に顔を押し付けて泣き崩れ、泣き疲れて眠りに着くのだった。