アンとマリラはスペンサー夫人の家へ到着した。

アンがこのアボンリー村にスペンサー夫人と来た際に、スペンサー夫人も孤児院から小さな女の子を引き取っていたのだが、その女の子がスペンサー家の娘と、まるで本当の姉妹のように、仲良く遊んでいた。

アンは、これから孤児院へ返されることになるであろう自分の境遇と、その女の子の境遇を比べて、胸が苦しくなったに違いない。

そこへスペンサー夫人が家から出てきたので、マリラはこの行き違いのいきさつを訊ねたのだ。

前回の時に書いたように、スペンサー夫人もまた聞きでアンを孤児院から連れてきたので、予期せぬ出来事に驚き、私のせいではないと言い訳をしたのだ。

マリラは、そこを責めずに、自分たちもこんな大事なことを直接たのまず、間接的にスペンサー夫人の弟に伝えたことを反省した。

ただ、今後をどうするかという話しになったときに、孤児院に返さなくても、ちょうどブルエット夫人のところで、お手伝いの人を探しているとのことで、これも神様のおぼしめしだと言った。

ちょうど良いタイミングで、必要とされている場所があるという意味で、スペンサー夫人は言ったのであろうが、私は、なんて恐ろしいことを言うのだろうか!と思った。

養女として迎えてくれる話しならまだしも、お手伝い・・・つまり、これまでの辛い境遇に逆戻りの話しをしたのだ。

アンは、その話しに、想像を絶する恐怖を覚えたことであろう!

マリラは、また違った意味で考えていた。

「あの、ブルエット夫人のところ・・・」と意味ありげな独り言を言った。

ブルエット夫人は、近所では、受け入れがたい評判の夫人のようなのだ。

アンは、目の前を明るくさせるために想像力を養ってきたが、想像力があるということは、逆のこともわかるのだ。

この夫人のもとへ行くということは、ただの想像力に加えて、経験からくる生活の辛さは、確信とも思える悲惨な想像となった。

涙ぐみながら様子をうかがっていたら、ブルエット夫人は、アンのことを体よく扱えるもののように話しかけた。

食事を与えるのだから、お行儀よく、言うことをよく聞いて、しっかり働け!と命令口調のような、思いやりのかけらもない、人を人とも思わないような口ぶりに聞こえた。

その、ブルエット夫人のアンに対する態度をみて、マリラは密かに決心した。

アンのこれまでの生い立ちを聞いたあとである。

アンが生きる場所は、これまでの生い立ちに重なるようなブルエット夫人のもとではなく、グリーンゲイブルズであると、マリラの心の中では確信した。

マリラは、孤児院へ返すと決めて来たのではなく、この行き違いの確認に来たのだと。そして、兄のマシューは、アンを引き取りたいと思っているようなので、一度戻って相談するから、ブルエット夫人のところへ連れて行かなければ、グリーンゲイブルズで引き取ることを決めたと思ってほしいと告げた。

アンもマリラの思いを感じてホッとしたようだが、私自身も本当にホッとした。

マシューは、心底願っていたのだが、馬車でマリラとアンが二人で帰ってきた姿を見て、本心喜んだ。

アンを見送ったときに、自分の臆病さを痛感し、後悔していたのだから、その喜びは表に表わさないがひとしおだったであろう!

アンは、生まれてからのすべての疲れを感じて、グリーンゲイブルズに到着して夕食までのあいだ、気づかぬうちに深い眠りについてしまった。