これまで、想像上での友達しか持てなかったアンにとって、となりの丘に住むダイアナ・バリーと友達になれるかもしれないという現実に、わくわく感と戸惑いをもっていた。

ダイアナのことを知っているマリラもマシューも、アンとは良い友達になれるだろうとお墨付きなのだが、これまで友達を持ったことが無く、先日の日曜学校でのアンを見る目の周囲の冷たさから、ダイアナが自分のことを理解し、受け入れてくれるかどうかが心配でもあった。加えて、ただの友達ではなく“腹心の友”という関係になりたかったアンにとって、その複雑な心境は、とうてい他人にははかり知れないものがある。

マリラは、型紙を借りるという口実をつくり、アンを紹介かたがた、一緒にバリー家に向かった。

もちろん、バリー家にも、アンの良きにつけ悪いにつけ、いろいろな噂が届いていたが、ダイアナの母であるバリー夫人は、快くアンを出迎えてくれて、ダイアナを紹介し、良き友達になってもらいたいと、ダイアナの友になることを望んでいてくれた。ここが、周囲の村人との違いで、よくできた人物である。ただの噂だけでアンを評価せず、アン自身を見て受け入れてくれたのだ。

ダイアナも、アンと会って、友達になれることを心待ちにしていたようだった。ともに話しがはずみ、アンはダイアナに“心の友”になってくれるよう頼み、二人で手をとりあって『おごそかな誓い』を立てあうのだった。

「太陽と月があらんかぎり、わが心の友ダイアナ・バリーに忠実なることを、われここにおごそかに誓います」

「太陽と月があらんかぎり、わが心の友アン・シャーリーに忠実なることを、われここにおごそかに誓います」

これまで、本を読むことで過ごしてきた内気なダイアナにとっても、目の前にいるアンが、少し変わったところのある少女ではあったが、アンと同じく、初めて持てる良き友と出会えたことがうれしくてならなかった。

ダイアナは、アンを部屋へ招き、今まで読んだ本を紹介して、おもしろいのヨ!と、気軽に貸すのだった。ほかにもアンが喜ぶことをいろいろ考えてくれた。

アンにとっては、ダイアナの好意がうれしくもあったが、少し心苦しいところもあった。

マシューは、人と接することを苦手としながらも、アンのために雑貨屋へ出向き、アンが前から欲しがっていたチョコレートキャンディを買ってきてくれてアンをたいそう喜ばせた。

これまでのマリラなら、そのような行為を叱っていたところだが、一つずつ大事に食べるならかまわないヨ!と寛大な態度を見せるのだった。そして、マシューと二人きりになったときに、アンが来てからの、この心通いあう温かく明るい家庭に、「アンのいない家なんて、今では考えられないね!」とまでマリラに言わしめたのだ。

アンは、マシューが買ってきてくれたチョコレートキャンディを半分、ダイアナへあげようと思いつき、これで少しの心苦しさも消え、キャンディを分け合うことに歓びを感じ、これまでの中で最高の幸せをかみしめながら、窓の向こうのダイアナの部屋の明かりを見つめるのだった。