出会ったばかりのアンとダイアナは、次の日に早速遊ぶ約束をした。

二人で、白樺の木が円を描いたように生い茂る木立に、二人だけの遊び小屋を作ろうというのだ。

アンは、マリラの言いつけ通り、家の片づけを終えると、古い食器や古道具を探し出し、約束の待ち合わせ場所である、アンとダイアナの家を結ぶ小さな橋で待っていた。

ダイアナはといえば、妹のミニーメイが、一緒に遊びたいとだだをこねたので、待ち合わせの場所へ行けず、困っていた。年のはなれた妹というものは、常に姉にくっついていたがるものだ。ダイアナのそわそわした姿にミニーメイは敏感に察知して、一緒についていくとだだをこねているのだ。

約束の時間を過ぎてもなかなか来ないダイアナだったが、昨日“心の友”と誓い合った仲である。約束を破るはずがない。何かあったに違いないと、アンはダイアナの家へ急ぐのだった。

ダイアナの家に着くと、ミニーメイに「今日は遊べなくなったのよ!」と、ミニーメイの気持ちをそらすように、言葉巧みにうそをつき、家の中に連れ帰ろうとしていて、アンにもそのうその演技に合わせるよう目配せをして、そっと小さな声で、あとから行くから、しばらく林の中で待ってるよう促した。

アンも、それを察してダイアナに合わせて、「今日は遊べなくなった。」と言い、家に帰るしぐさで去っていき、近くの林の中に隠れて、そっと様子をうかがっていた。

ダイアナが、「遅れてごめんなさい。」と駆け寄ってきたところへ、ミニーメイに気づかれ、「ダイアナのうそつき!」と、置いてきぼりをくわされて泣きじゃくったのだ。

そこでアンは、ダイアナの気持ちを察して、「ミニーメイも一緒に遊びましょ! 私、小さい子供をあやすのは得意なの! だって、グリーンゲイブルズに来る前は、3組の双子の面倒をみてたのよ!」といって、ミニーメイにうそをついたことを謝り、3人で手を取り合って、林の方へ向かったのだ。

ミニーメイが二人のお姉さんに手をとられ機嫌もなおり、とてもうれしそうに歩いたことと、ダイアナの気持ちも嬉しさでいっぱいだった。それは、アンの態度が、二人きりで楽しく過ごしたい気持ちを我慢して、しぶしぶミニーメイを連れていこうというのではなく、大丈夫よ!という、心優しい行為だったからだ。普通なら、面倒のかかる小さい子供など、ほっといて遊びに行こうというところだ。

そこへ母親のバリー夫人が現れて、ミニーメイに「一緒に出かけますよ!」と、町へ出かける誘いの声をかけてきた。アンとダイアナを二人だけで遊ばせてあげようと、さりげなく、救世主となったのだ。

ミニーメイは、始めは母親の誘いに「イヤだ!!!」と強く反対したが、「何かいいものを買ってもらえそうよ。」とのダイアナの言葉と、アンもそう思うという二人の言葉から、「今度、一緒に遊んでね!」というミニーメイに「いいわよ!」というアンの返事に安心して、ミニーメイは何も我慢することなく、母親の元へ走っていった。

そこからは、心おきなくアンとダイアナの二人の世界である。白樺の木立までの道のりもうれしく、キラキラ光るガラスの欠けらさえも“妖精の鏡”と化し、アンの想像力と昨日貸してくれたダイアナの本から生まれたお互いの気持ちで世界が一変し、二人で手を取り合って駆け出すのだった。

“樺の木立”についてからも、樺の木でかこまれた場所を“大理石の柱の大広間”と見立て、屋根は緑で、緑の隙間を“水晶ばりの天窓”と想像し、樺の切り株を豪華なソファーとテーブルに見立てて、上流社会の奥様風さながらに話しながら、お茶の準備をした。アンによって『アイドルワイルド』と名付けられたその場所で、ままごととしてお茶の用意をした中に、アンが用意したチョコレートキャンディが置かれ、形だけでない本物のお菓子が出てきたことに、ダイアナはびっくりした。

マシューに買ってもらったものを、ダイアナと分け合いたくて持ってきたことをダイアナに告げ、そこにはいないミニーメイの分まで数をわけて、二人もそれぞれ食べた。

二人の心は、本当に満たされていた。それぞれの思いやる気持ちが通じ合ったのだ。“心の友”としての、これほどすばらしい結びつきはないだろう。

お互い、心の底から笑いあって、林の中の湧き水が出る、くぼ地の泉に向かった。アンが、妖精が住むという意味の“ドライアドの泉”と名付けた場所だ。二人とも喉が渇いた上に、心が満たされていたこともあって、その透きとおった湧き水は本当においしく感じた。

二人が楽しく充実したひと時を過ごし、アンの人なりを知ったダイアナは、日曜学校での花輪帽子事件のうわさ話に触れた。アンは、そのことのせいで、孤立してしまい誰とも話せなかったことを自分のせいだと反省していることを伝えると、ダイアナは、皆が本当のアンを知らないからで、これからは私から紹介するから心配しないでね!と優しく受け留めてくれたのだ。

今日の二人にとって、何を見てもどこを見渡しても、素晴らしかった。とても満たされた気持ちで、一日が終わるのだった。

「また、明日ね!」・・・二人の約束の橋で、二人は分かれた。