アンとダイアナは、林の中や、樺の木立の“アイドルワイルド”で、毎日のように楽しく遊んだ。

あまりに楽しすぎて、時間のたつのも忘れ、マリラとの約束の時間をすっかり忘れて、帰ってきても、真っ先にマシューに、今日の出来事を報告するしまつで、マリラは呆れていた。

マリラに、いつまでもおしゃべりしていないで帰ってきなさい!と促され、家の中に入っても、マリラにひっきりなしに話し続けるのだ。

今日、ダイアナに、日曜学校でのピクニックが近々行われる予定との話しで、“きらめきの湖”横の野原で、楽しく過ごし、【アイスクリーム】まで、振る舞われるらしいという話しを、夢を描くかのごとく、その様子を想像して延々と話し続けた。特に、今まで食べたことのない【アイスクリーム】の話しは、例えようのない美味しさだろう!と、目を輝かせて、マリラに話し続けた。その日の待ち遠しさは、半端ない気持ちであったのだろう。

次の日曜日に教会へ行き、日曜学校に参加して、牧師から正式にピクニックのことが発表されると、なお現実的となり、その日を迎えるまでの日々さえまでも楽しいと思える、と頭の中は、ピクニックのことでいっぱいのようだ。

アンは、ふと、マリラの胸元のキラリと光る紫水晶のブローチに目を留めた。

「なんて素敵なブローチなんでしょう!」と、本物のダイヤモンドにも勝るとも劣らないほどの輝きだと、ウットリするようなまなざしで熱弁した。

家に帰って、再びマリラが出かけた後、マリラの部屋の前を通りかかったアンは、開いていた扉の向こうに、さっき見惚れたブローチの輝きが目に入って、そっと部屋の中に入り、ブローチを手に取って服につけ、鏡に映して満足げに少し踊ってみた。

マリラが帰ってきて、部屋を見ると、ブローチが見当たらない。あちこち探してみたが、どうしても見つからないのだ。アンに、「アン!ブローチを見なかったかい?」と、ブローチに興味をもっていたアンに尋ねると、つい目にとまって我慢ができず、マリラの部屋に入って手に取って自分の服につけてみたことを正直に言うと、そのあとちゃんと元に戻したということは取り合わず、アンが持ち出して失くしたと決めつけたのだ。

アンは嘘を言っていないのだが、何度探しても見つからない現実と、最後にさわったのはアンなのだから、アンがいくら元に戻したと言い張っても、失くしたことが気まずくて、正直には言えないのだろう。こんな嘘は、決して許してはならないと、完全にアンを犯人扱いして、きつい罰則を与えないといけないと、マシューにもそう報告するのだった。もちろんマューは信じていないが、ブローチが失くなった事実から、アンは幼いのだから、許してあげればいいんじゃないかとの言葉に、マリラは反発するのと同時に自分が責められているような、一人取り残されたような異様な気持ちにさせられたのだった。

マリラの罰則が、正直に話さないと部屋から一歩も出てはいけないというもので、もちろんピクニックに行くなどもってのほかだ!ということになって、アンにとっては地獄のような罰則となったから、大変な事態となった。

ブローチを触りはしたが、元に戻したと決して嘘は言っていないのに、そのままだとあんなに楽しみにしていたピクニックに行けなくなるのだ。

アンは、泣いて泣いて、疲れ果てるまで泣きじゃくって、マリラに抵抗し、夜を向かえた。

明日は、待ちに待ったピクニックの日である。