夏が過ぎ、新学期が始まると同時に、アンは学校へ通うことになっていた。今日がその日で、すがすがしい朝をむかえていた。アンにとって学校へ行くことは、皆に受け入れてもらえるかどうか少し心配ながら、ダイアナに「私から皆に紹介するから、心配ないわよ!」といわれているので、今日を楽しみにしていた。

マリラはこれまで学校というものにかかわってこなかったことと、アンがとんでもないことをしでかしやしないかと、心配しながらも、アンにお弁当をつくって、アンを学校へ向かわせる準備を怠らなかった。アンは美味しいお弁当を持って学校に行けることがとても幸せだった。

ダイアナとの約束で、丸太橋で待ち合わせをし、樺の木が立ち並ぶ小道から通うことになっていた。そこは、アンが“恋人の小径”と名付けた、いかにも恋人たちが語らいながら歩くような想像ができるロマンチックなまっすぐな小径だった。途中には、ダイアナいわく、スミレの季節には満開に咲き乱れるという“スミレの谷”と名付けた場所もあり、学校への道さえもアンにとってはワクワクとさせてくれる景色で、ダイアナとはしゃぎながら学校へ向かった。

学校に着いてからは、ダイアナに合わせて、「おはよう!」と挨拶し、ダイアナに誘われるままに、となりが空いているからと、ダイアナの横の席に座った。

教師のフィリップス先生がアンを見て、「ノバスコシアの孤児院から来たアン・シャーリーですね。」と、意地悪く尋ねたので、「グリーンゲイブルズのアンです!」と言い返した。フィリップス先生の言い方がしゃくにさわったのだ。生徒みんなが承知していたが、フィリップス先生はあまり感じの良い先生ではない。年長でクイーン学院をめざしているプリシー・アンドリュースばかりえこひいきしているようで、皆はフィリップス先生がプリシーにお熱をあげている・・・つまり恋心をもって特別扱いしていると噂していた。

アンは、これまでまともに学校に通うことができていなかったために、少し勉強が遅れていて、同じ年のダイアナ達より一学年下の教科書で学んでいたが、苦手な算数の分数を解いているときに、他の学年の詩の朗読にうっとりして、石板の裏側にその詩を書きこんで、そっと朗読してみたところ、それをフィリップス先生に嫌味な感じで注意されて、唇をかみしめるほどイヤな思いをした。

お昼休みのお弁当の時間に、外の野原で女の子たちで輪をつくってお弁当を食べていると、みんながフィリップス先生のことを非難して「気にしないでね!」と見方をしてくれて、リンゴを分けてくれたり指輪をフィリップス先生除けのおまじないと称して貸してくれたりした。たったの今日一日で、ティリー・ボルターやルビー・ギリスやソフィア・スローンやジェーン・アンドリュースといった数人の友達ができたのだ。

アンはうれしくなって、皆に、フィリップス先生に注意された詩の朗読を演技をまじえて見せてくれた。それはみなが目を見張るおもしろい演技で、まわり中から拍手を受けた。アンは、この上ない喜びを、ダイアナに勢いよく抱きつくしぐさで表現し、ダイアナは、先日アンに歌って聞かせた【はじばみだにのネリー】という歌を歌いましょう!と、輪を作った友と一緒に手をつないで歌うのだった。

学校から帰ってきて、友達ができたことや学校が好きになったことを、いつものごとくしゃべり続けたが、印象がわるかったフィリップス先生のことを悪く言い続けることを、「先生のことをそんな風に言うもんじゃない!」と強くたしなめて黙らせた。そして、勉強の方はどうだったのかと尋ねられたので、ずいぶん遅れていることを告げると、フィリップス先生とのやり取りで悔しい思いをしたこともあいまって、これからはしっかり勉強して遅れを必ず取り戻すと言い、アンは自分に誓ったのだった。