アンは少しづつ学校にも慣れ、楽しい毎日を過ごしていた。

アンは、女の子の友達もたくさんできたが、男の子にも人気があるようで、ちょっとぽっちゃりな、チャーリー・スローンがアンに気があると、ダイアナに冷やかされ、アンはすらりとその冷やかしをかわした。自分の容姿のことをよく知っているので、あまり男女のことについては考えたくはないようだ。

ある日、ダイアナが、「今日からギルバート・ブライスが来るのよ!」と嬉しそうにアンに言うのだった。

ギルバートはとてもハンサムで、みんなの人気者。いつも女の子をからかってドキドキハラハラさせる、少し年上の男の子で、壁に女の子との落書きをされるような注目されるべきクラスメイトとのことだが、アンにはまったく興味がなく、むしろ関わりたくない存在に感じた。ダイアナ自身は、黒髪のことを“カラス”とからかわれることが、少しばかり嬉しい様子で、ギルバートを気に入っているようなのだ。

ただ、ギルバートはずっと勉強のできない環境にあって、現在短期間で成績をあげているらしく、これまでアンがクラスのトップ成績だったが、これからはそうはいかないとダイアナに言われ、勉強のライバルとしてなら望むところ!と、勉強に対して闘志を燃やすのだった。

ギルバートは、あいかわらず前の席の女の子をからかい楽しんでいる様子で、そうしながら、初めて見るアンに関心を持ち、自分に気づかせようとウィンクしたり、駒をまわしてみたりと、いろいろなゼスチャーをし続けたが、アンはまったくそれに気づかず、というより外の景色に見とれて空想をめぐらし、自分の世界にひたっていたのだ。

ギルバートは、これまで女の子をからかって自分の方に振り向かせることを楽しんできたのに、まったく自分に興味を示さないアンにしびれをきらし、とうとうアンが一番嫌う行為にでてしまった。

「にんじん!!! にんじん!!!」と、アンの三つ編みに結った赤毛をつかんで叫んだのだった。

アンの怒りはすさまじく、「この卑怯者!!!」と唇をギュッとかみしめ、それでも我慢できず、自分の石板でギルバートの頭を叩きつけ、石板を粉々に砕いてしまった。

マリラに、あれほどかんしゃくを起こすような騒動を起こしてはいけないと言われていたのに、どうにも我慢がならなかったのだ。いかに赤毛を気にして、コンプレックスに感じているかが、ここでもよくわかる。

ギルバートにしたら、女の子をからかうことは日常茶飯事の行為で、そこまで怒るとは思ってもみなかったが、アンの他の女の子と違う態度に、自分が悪かったと謝り、許してほしいと、これまた今までにはない反省の態度を見せた。

アンは、ギルバートのことをどうしても許せず、一生許さない!と心に誓ったのだが、その数日後、休み時間に学校の周囲を探索して教室に戻るのが遅くなり、外で遊びまわっていた男の子たちと一緒に、慌てて教室に入ってくるアンを見たフィリップス先生が、男の子と一緒なのがそれほどいいのか、と違う意味でアンを皮肉って、アンをギルバートの横の席につかせるという罰を与えたのだった。

アンは、それに静かに従って顔を机に伏せて、悔しい思いをどこにもぶつけられずにいた。そして、授業が終わって帰り支度をするときに、今まで自分の机にしまってあった勉強道具をいっさいがっさい持ち出して帰ろうとした。もう二度と学校へは来ない!という意思の表れであった。ダイアナが驚いて、そんなことを言わないで!と懇願するも、心の友であるダイアナの言うことはききたいが、今回ばかりはどうにもならないのだ!と気持ちを曲げられない強い意志を伝えて、ダイアナを悲しませた。

マリラはそのいきさつを聞いて、アンに明日からも学校に行くよう促したが、これまでのアンを見てきたマリラは、アンのかたくななその姿をみて、それ以上強くは言わず、隣人で子供を10人も育てたことがあるというリンド夫人に相談に行くのだった。

リンド夫人は今回はアンの味方だった。もちろんリンド夫人もこれまでのアンを見てきているし、今回のフィリップス先生のやり方は、いくら先生といえど、やり方がよろしくないと判断したようだ。マリラにもそのことが理解できるようで、ならば、アンにどういう接し方をすればいいのかと尋ねると、リンド夫人は、しばらくはそっとしてあげれば、そのうち気持ちも変わってくるから、そのままアンのやりたいようにすればよいと助言されて、マリラはそれに従うことにした。そして、アンを見守ることにした。

アンはというと、ギルバートのことと、フィリップス先生の仕打ちにどうにも我慢ならず、学校へ行くことをやめるという登校拒否にでたことを、窓の外のダイアナの家を見つめながら、「ダイアナ!ごめんね!」とささやくのだった。一方では、とても辛い気持ちでいっぱいだったのだ。