アンが学校へは行かない!と登校拒否状態になってからは、一人で勉強に励んでいた。でも、心の中ではうわの空で、ダイアナのことを考えていた。ギルバートとフィリップス先生への憎しみに反して、ダイアナへの募る思いから、突拍子もないことを想像していた。

ダイアナがお嫁に行く姿を想像していた。真っ白なドレスを着て美しく輝いている花嫁ダイアナが、見知らぬ花婿とともに、心の中で泣きながら笑顔で付き添い役となっているアンの前から去っていくという想像なのだが、部屋の窓辺で泣きながら落ち込んでる姿を心配したマリラが尋ねて、その突飛な想像の話しを聞いた途端、あまりに現実とかけ離れた取り越し苦労とも思える話しに、マリラはお腹を抱えて大笑いをした。

そして、アンを現実の世界にひきもどし、今から料理を教えるから支度をするよう言ったが、アンは今は料理する気分じゃないと答えたが、その料理教室の内容が“チョコレートブラウニー”というチョコレートケーキ作りと聞き、一気に興味がそちらへ移ったのだ。想像では、美味しいお菓子にありつけないよ!と言われて、素直にお菓子作りに気持ちを切り替えた。

料理の達人のマリラの指導がとても優しく、アンも真剣にそして嬉しそうにチョコレートブラウニー作りに取りかかった。お茶の時間に間に合うように仕上がり、マシューと農作業手伝いのジェリー・ブートが農作業から戻ってきて、部屋中の甘い香りにうれしそうに期待した。

マリラ・・・少し硬めだが、初めてにしては上出来として70点

ジェリー・・・十分美味しいと90点

マシュー・・・100点といいかけて、マリラに遠慮しておかわりした

それぞれがとてもおいしいと感じて食べてくれる様子に、アンはとても満足げだった。

学校へは行かなくなったが、ダイアナとは会っていたので、チョコレートブラウニーを持って、会った時に、ダイアナは75点と冗談交じりで、美味しそうにケーキを頬張るダイアナをみて、学校に来てほしいと心配してくれていることを申し訳なく思いながら、今の日常に満足していた。

始めて見るグリーンゲイブルズの秋の景色のなんともいえない素晴らしい黄や紅い葉を“霜の妖精”といわしめ、アンの気持ちを高揚させるのだった。ずっと住み続けているダイアナも、秋の色とりどりの景色の素晴らしさは、「とてもロマンチックね!」といわしめた。

ダイアナは、学校での出来事を事細かに報告し、あまり好きではないガーティー・パイという子と隣同士になり嫌な思いをしていることや、口ごたえした生徒に鞭を打つという体罰を与えた生徒の親が、フィリップス先生に抗議したという、現代版モンスターペアレンツの話しなどをいろいろと話して聞かせたが、ギルバートの話しになりかけたときにすぐさま話しを中断させた。一生許さない!と心に誓っているアンの怒りのポイントに触れたからだ。

ギルバートへの怒りを抑えきれないまま、アンとダイアナが歩みを進めていると、目の前にギルバートが立っていた。そして、アンに再び、あの時のことは悪かったと謝り、「あれだけのことで学校に来なくなるほど怒るとは思ってもみなかった。」と言ったが、アンにとっては、謝ってきたことより、「にんじん!!!にんじん!!!」とからかったことを『あれだけのこと』と表現したことに、更に火に油を注ぐかのごとく怒りを増長させ、ギルバートを無視して通り過ぎたのだ。ダイアナは、なんとか気を静めさせようと説得したが、この気持ちはどうしようもないと伝えて、「ダイアナ!あなたにだけはわかってほしい!」と懇願し、ダイアナは黙ってうなずくのだった。

アンは、前以上にギルバートへの怒りは増し、頭の中は怒りでいっぱいだった。それにより、マリラの言葉が頭に入らず、プディングソース事件は起こった。残ったプディングソースの瓶をかたずけるようマリラに言われた時、何度も瓶にふたをするよう注意を受けたのに、ふたをせずに棚にしまい込んで、次の朝、ハッと思い出して瓶を覗いたら、なんとハツカネズミがソースの中でおぼれ死んでいたのだ。身の毛もよだつ思いをしながらハツカネズミを窓の外に捨て、マリラに報告しようと外に出たら、あまりの木々の色づきの美しさに思いが移ってしまって、そのことをすっかり忘れてしまった。

ある日、不意にチェスター・ロス夫妻の訪問を受け、マリラは大慌てで食事の準備をし、話し好きなアンは、お客のホスト役として上品に振る舞ったのだったが、マリラがそうとは知らず、ハツカネズミがおぼれ死んでたというプディングソースをお客様に、「ご自由にどうぞ!」と手渡しのだから、アンは上品な振る舞いから一転して、そのことを叫んだのだ。

マリラもアンも恥ずかしさのあまり赤面し、マシューも含めて何事もなかったかのように何も言葉を発せず、マリラはそのメニューをそそくさと片づけて、イチゴのシロップ漬けを用意した。アンは気まず過ぎて手を付けられず小さくうなだれるばかりだった。チェスター・ロス夫妻が物静かにすましているので、どう思われたかが気が気ではなかったのだ。

その出来事を一部始終ダイアナに話して聞かせたが、ダイアナに「なぜ、ふたをし忘れたの?」と聞かれて、しもしない想像の話しを言って、ギルバートへの怒りの気持ちによるものだという事実を、心の友であるダイアナにさえ言うことができなかった。

ダイアナは、アンのその想像の答えを疑うことなく、「あなたらしいわね!」といい、グリーンゲイブルズの景色に見とれるのだった。