アンは、グリーンゲイブルズの秋の景色を堪能し、色づいた葉のついた小枝を持ってグリーンゲイブルズに駆け込み、10月という季節を迎える素晴らしさをマリラに伝え、小枝を部屋に飾るといって、勢いよく階段を駆け上がっていった。

マリラが、階下からアンを大声で呼んだ。午後から出かけるので、アンにとっていいことかどうかわからないが、ダイアナをグリーンゲイブルズでお茶に招いても良いと、マリラが言った。

アンの喜びようは、半端ないものだった。客間の使用はダメだといわれたが、フルーツケーキやクッキーを出しても良いといわれ、以前お客に出したときの残りのリンゴ水を飲んでも良いといわれて、アンが思い描いている以上の様子でダイアナを招待できることがうれしくて、すぐさまダイアナの家に駆けだして、直接お茶のお招きを伝えに行ったのだ。ダイアナも大喜びで、二人で手を取り合って、踊りだした。

午後になると、ダイアナは2番目にいい服でめかしこんで、グリーンゲイブルズにやってきた。

上流の奥様風に、上品なことばで演じながら会話をし、リンゴを取って食べながらひと時を過ごしてから、食堂に戻ってお茶の準備に取りかかった。

アンは、テキパキとお茶の用意をしながら、アンの想像での物語を話して聞かせていた。ダイアナが天然痘にかかり命の境をさまよっており、アンは天然痘がうつることも恐れずダイアナの看病をし、ダイアナが回復したのちにアンが天然痘にかかり死んでしまい、ダイアナが一生涯アンを思い続けるという、涙をそそる物語で、ダイアナは、アンが持ってきたイチゴ水を飲みながら、その物語をうっとり聞いていた。

ダイアナが飲んでいたイチゴ水は、マリラが飲んでも良いといってくれたマリラ手作りのおいしいジュースなのだが、ダイアナが今まで飲んだことがないほどおいしいと絶賛で、3杯もおかわりをして飲み続けていたのだ。

お茶の用意ができたところで、ダイアナはふらついて、ガタン!と音を立て、アンは驚き駆け寄ったところ、「気分が悪いの。家に帰らなくちゃ!」と、せっかく用意したお茶とお菓子を食べずに帰ると言いながら、フラフラと家に向かって歩き出したのだ。

アンは、ダイアナと素晴らしい様子でお茶の時間を過ごそうと、精一杯尽くしたのに、それをせずに理由もわからず帰ってしまったことに、大いに困惑し、またとても悲しくて、泣き崩れてしまった。

ふさぎ込んでるアンの気をそらそうと、リンド夫人のもとに使いに行かせて帰ってきたアンは、またしても椅子に顔を押し付けて泣き叫んだのだ。

リンド夫人から聞くところによると、バリー夫人がカンカンに怒っていて、アンがダイアナにアルコールを飲ませて酔わせ、ぶざまな姿で家に帰したと思い込んで、アンのことをダイアナの友達としてふさわしくないから、今後決して会わせないと言っていたというのだ。

アンがそんなことをするわけがなく、マリラもイチゴ水で酔うはずがないので、そのダイアナが飲んだとする瓶を確かめにいって、それがイチゴ水ではなくブドウ酒だった瓶を見て大笑いしたのだ。

「アン! あんたはゴタゴタをおこす名人だよ。私も、イチゴ水を地下にしまっていたことを、今の今まで忘れていたよ! 原因がわかったんだから、気に病むことはないよ。バリー夫人だって、アンがしでかしたことじゃないことがわかれば、誤解も解けるだろうよ!」

マリラの言葉に、少し期待したアンだったが、マリラがバリー家から帰ってくるのを、じっと待っていたところへ、マリラが帰ってきたときのマリラの態度と顔色を見て、再び打ちのめされて、恐怖と化した。

アンが一人であわててバリー家に向かい、バリー夫人に心の底から詫びて許してもらおうと頼み込んだが、その思いも伝わらず、きびしい言葉と一緒に、玄関の扉をパシンと音を立てて閉められてしまった。

アンは走ってグリーンゲイブルズにもどり、玄関先で心配そうに待っていたマリラの胸に飛び込み、大声で泣き崩れた。そこにマシューも居合わせたが、どうにもならないこの状況に、二人ともアンの辛さを受け留めるしかないと見守るのだった。