アンは、勉強も家の手伝いや、パッチワークも何も手につかず、魂が抜けたように日々を過ごしていた。そこへ、窓の外にダイアナの姿を見て、一目散に駆け出していった。許されたのだと思ったのだ。

ところが、ダイアナは背を向けて、いつもの待ち合わせの丸太橋へ向かって行ったのだ。ダイアナはとても辛そうだった。

「お母さまに、アンが悪いんじゃないと、どんなに泣いてたのんでも許してもらえないの! 今も、お別れの挨拶をするためにと、やっとのことで10分の時間をもらったのよ!」

二人は、この事態を受け入れるしかないと悟った。そして、今後決して他には“心の友”を作らないと、お互いの変わらぬ愛情の誓いをたてて、アンはダイアナの黒髪を“友情のあかし”としてもらい受け、一生大切にするとダイアナに誓った。別れても心はつながっているという意味の“あかし”なのだ。

アンはグリーンゲイブルズにもどって決心した。学校に戻ることをである。ダイアナと話したり遊んだりすることを許されずとも、お互い姿を見ることだけを許される唯一の場所だからだ。ギルバートのことや、フィリップス先生のことを忘れたわけではないが、ダイアナとの縁を断ち切られたことは、彼らへの憎しみを上回るほど苦しく辛いことだったのだ。

学校にもどった景色は、何も変わらない姿だったが、以前のようには何か受け入れてもらえていないような、さびしい景色に思えた。ただ、もとの多くの友達は、ダイアナをのぞいて、喜んで受け入れてくれた。アンが学校に来ないことを心配してくれて、早くもどってきてほしいと待っていてくれたのだ。ルビーやソフィアやティリーやほかの女の子たちはアンにプレゼントをくれて、アンを喜ばせてくれた。女の子だけではなく、ギルバートはリンゴを、アンを好きなチャーリー・スローンは、高価な石筆(石板用の鉛筆のようなもの)をプレゼントとしてくれたが、リンゴは床に投げ捨てられて、石筆はお礼の言葉と、大切に使うという、命運をわけたプレゼントとなった。アンはギルバートのことはあいかわらず許すことはできなかったのだ。ダイアナはというと、話すことすら許してもらえなかったので、顔を見合わすことすら避けているようだった。

ただ、ダイアナの気持ちは、まったく変わっておらず、たとえ母親に許してもらえなくても、アンとのつながりを断つことなど考えられず、思いのたけを手紙にし、クラスメートの手渡し方法で、アンの手元に届けられた。優しいクラスメート達である。

そこには、ダイアナの愛情あふれる思いがめんめんと書き綴られており、アンの苦しみは一変して、心が満たされた。手紙と一緒に添えられたしおりに、アンはキスをして、すぐに返事を書き、またクラスメートの手渡し方法でダイアナの手元に届けられ、アンも同じく変わらぬダイアナへの愛情を心を込めて書き綴った手紙を読んだ。

教室には、多くのクラスメートがいたが、アンとダイアナにとっては二人だけの世界になり、あらためて二人の絆の深さを互いに感じあうのだった。