ダイアナとは、遊ぶことも話すことも許されていなかったことと、アンがどうしても許すことができないギルバートには負けたくないという強い気持ちから、勉強に励むこととなり、結果として、ギルバートとともに優秀な成績を修め、共に5学年に進級することとなった。

ちまたでは、カナダの大統領本人がプリンスエドワード島に遊説に来るとの話しがもちきりで、村中の人々がその遊説地であるシャーロットタウンに出向く中、マリラもそれにもれず、リンド夫人と一緒に出かけることとなった。

アンとマシューは、二人きりでのんびりとグリーンゲイブルズで過ごしていると、そこへダイアナが飛び込んできた。

「アン!アン!すぐに家へ来て! ミニー・メイが大変なの!」

アンは一瞬、母親の許しがあって来たのかと思いきや、切羽詰まったダイアナの様子を見て、

「ダイアナ!どうしたの?」

「ミニー・メイが喉頭炎にかかったみたいなの! 高熱を出して苦しそうで、お父様とお母さまは出かけていて医者を呼びに行く人がいないの! 怖くてたまらないわ! アン!どうすればいいの?」

マシューは何も言わず、早々に馬車の支度をして、医者を呼びにいった。アンは薬の用意をしてダイアナとミニー・メイの元へ走った。アンにはいくぶんか覚えがあった。幼少期に、ハモンド家で三組の双子の面倒をみていたので、少なからず役に立つと思ったのだ。アンにとってこの予想もしない共に過ごすことを許されなかった年月を思えば、ダイアナと苦しみを分かちあえる喜びははかり知れないものであった。

アンは、ミニー・メイの様子を見て、少しづつ薬を与え、喉につかえた痰を出すことに努め、瓶に残るわずかな薬に、全ての願いをたくし、最後の薬を飲ませて、マシューが連れてくるであろう医者の到着を待った。

シャーロットタウンに出かけているのであろう、医者という医者を尋ねたが留守で、マシューが途方に暮れながらもあきらめず、他の村まで馬車を走らせて探し回り、やっとの思いで連れてきた医者が、ミニー・メイの診察をしたところ、峠は越えていて、もう心配ないとのことだった。そして、アンの手柄を大いにたたえ、すばらしい処置であったことに感服した。アンは、その時の一生懸命な対応と、平静を保ちながらも心の中はヒヤヒヤや、あきらめの気持ちもあったことや、最後の薬を飲ませた数分後に痰を吐いて楽になっていく姿にホッとしたことなどを、目を輝かせて医者に話し、「その気持ちは想像していただくしかないわ!」といったアンに、医者は、「よくわかるよ」と頷くのだった。

ダイアナは、嬉しさのあまり、泣きながらアンを抱きしめ、アンも同じ気持ちで涙がにじんだ。

バリー夫人にお礼を言われた医者は、ミニー・メイの命が助かったのは、アンの処置のおかげで、私が到着してからの処置であれば、間に合わなかったでしょう!と伝えた。

マシューとの帰り道、できることをやり遂げてミニー・メイを救えたことで、アンは道すがらの景色がすばらしく美しく見えた。アンは疲れ果てて、グリーンゲイブルズに着いてからはぐっすり眠っていたが、その間にバリー夫人がアンに会いに来たと、シャーロットタウンから帰ってきていたマリラから聞いた。アンが疲れて眠っていたので、いったん帰ってもらったが、ミニー・メイの命の恩人であることへのお礼と、ダイアナのことが誤解であったことのお詫びと、これからもダイアナと仲良くしてほしいと言うために来たということだった。そして、今夜バリー家に招待をしたいということだった。

アンにとってはこれ以上ない喜びで、夜まで待ってられず、マリラのことばをさえぎって、上着も着ずにバリー家に向かって走っていった。

バリー家では、重要な大人へのようなおもてなしで、とっておきの茶器にお茶を注ぎ、いろいろなお菓子やケーキでテーブルをいっぱいにして、ダイアナの両親とダイアナとアンは、話しをはずませながら楽しく穏やかに時を過ごした。

そのあと、音をたてずに静かに近づいて、ミニー・メイの安らかな寝息を確認し、それからダイアナの部屋へいった二人は、再び心の友としての誓いをたてあった。

「私があなたを愛するように、あなたも私を愛するならば、私たちを引き裂くものは、死よりほかには何もない」

明日学校に行ったら、フィリップス先生にあらためてダイアナの隣の席にしてほしいと頼むつもりよ!と言ったアンに対して、ダイアナが私も同じことを考えていたのよ!といったところなど、心でつながった本当の友と感じることができる。

ダイアナと一緒にお菓子を作っているところへ、バリー夫人と猫が部屋に入ってきて、お菓子の材料でいっぱいのテーブルをぐちゃぐちゃにされたことも、互いに笑いあえるほど、それぞれが穏やかな気持ちであった。

マシューが迎えに来てグリーンゲイブルズに帰る時も、明日も会えるという安心感から、満面の笑顔で大声で叫び手を振った。「ダイアナ!サヨウナラ~!!! また明日ね~!!!」別れに寂しさは微塵もなく、嬉しさでいっぱいだった。

グリーンゲイブルズに帰ったアンは、寝る支度のときに、マリラに言った。

「私、幸せでいっぱいよ! 赤い髪の毛なんて今は問題じゃないわ! ここにいるのは、完全に幸福な人間なのよ!」

アンは、心の底から安心して、心地よく眠りにつくのだった。