アンとダイアナは、バリー家に受け入れられたことで、仲を妨げられるものはないことで、より一層のつながりで、楽しい毎日を過ごしていた。グリーンゲイブルズはすっかり冬景色となり、一面真っ白な雪景色でおおわれていた。ダイアナとのことで、コンプレックスであった赤毛のことすらどうでもよくなったアンではあったが、なぜかギルバートのことだけは受け入れられなかったが、憎む気持ちがいつしか学問のライバルという気持ちを通り越して、どこか気になる存在になってきたが、アン自身がそのことに気づいていないのか、気づきたくないのか、時々名前を口にしかけてすぐにそらすといった具合だ。

アンとダイアナは、部屋の窓から二人だけで通じ合えるろうそくの光の合図で言葉を交わしていたのだが、あるときダイアナが急ぎ伝えたいことがあるから会いたいというメッセージの合図をよこした。夜にもかかわらず、1分と待てなかったアンは、急ぎダイアナに会いに行くとマリラにいうと、その喜びようをみて、10分だけ外出を許された。

帰ってきたアンは、ダイアナの急用とは、明日がダイアナの誕生日なので、学校帰りからそのままバリー家に向かい、泊りがけの招待と、従妹たちと一緒に特別にコンサートに出かけても良いという、アンにとって夢のような話しだった。泊まるベッドも客間のベッドを使っても良いという、特別待遇にアンは有頂天になる一方だったが、子供が夜に出かけるというコンサートに出向くことも含めて、マリラはそのような度の過ぎたところには行かせられないと、泊りがけの誕生会の招待に反対した。

アンを信じ切っているマシューは、「行かせてやらにゅあいかんよ!」と何度も繰り返し、これまでは、最後はマリラの意見に従っていたマシューだが、初めてマリラの意見より強く意見を言い、アンの思いを遂げさせてあげようと、言葉は穏やかながら、意思を強く伝え、マリラの信念をもくつがえさせた。

バリー夫人もマリラもそうだが、保護者ともなると、いじわるからではなく、ダイアナやアンを守るために、道をはずさないよう歯止めの立場にたつようである。

バリー夫人はダイアナが些細なきっかけでアルコールを口にしたことでぶざまになった姿を見て、これではいけないと強く思ったこと、マリラは夜にコンサートに出かけるということで、いかがわしいことを覚えるのではないかと心配して反対したということである。

しかし、バリー夫人は、ミニー・メイのことで本当のアンの人柄を信じることができて、あらためてダイアナにとって必要な友と思えたし、マリラも当初は義務という気持ち一心でしつけを考えていた時より、思いやりをもってしつけすることの大切さから、マシューの気持ちも少しづつわかってきたのだ。

次の朝、マシューの強い意志により根負けしたマリラは、泊りがけのダイアナの誕生会とコンサートのことを許すことにした。アンはマリラに飛びついて喜び、その日の学校では、授業どころではなく、頭の中は、今夜のコンサートのことでいっぱいになった。走ってオーチャードスロープ(バリー家の屋号)にもどり、誕生会を催し、美味しいお茶とお菓子が振る舞われたのち、コンサートの準備で、髪を結い直したり服を選んだりとあれこれ工夫をしてみたが、結局いつもの髪形で落ち着き、従妹たちが迎えに来るのを待った。

コンサートはアンの想像を上回るほど興奮させられるものばかりで、泣いたり笑ったりと感激のしっぱなしで、いつも軽蔑しているフィリップス先生の演技さながらの暗唱はすばらしく、大きな拍手を送った。最後のギルバートの朗読だけはどこか気になるが聞きたくないという態度をつらぬいたのだ。アンはどこまでギルバートを無視しつづければ気が済むのだろうかと、ダイアナは不思議でならなかった。

コンサートが終わってオーチャードスロープに帰り、興奮冷めやらぬまま、いよいよ客間のベッドで寝る支度をし、気持ちが高ぶったまま、アンがダイアナにベッドまで競争しよう!といい、二人で勢いよくベッドに飛び乗ると、布団の下から悲鳴のような叫び声がして二人とも驚き、部屋を飛び出した。

その悲鳴の主は、ジョセフィンおばさんで、父方の伯母にあたる人で、近々来ることになってはいたが、予定より早くやってきたようだった。ジョセフィンおばさんは、ダイアナが好きな音楽の道への学資を出してくれる予定だったが、この失態で、その気が失せたとダイアナのことをカンカンに怒り、すぐにでもオーチャードスロープを去り、シャーロットタウンに帰ると、謝罪のことばも耳に入らないようだった。ダイアナはというと、自分の将来が危ぶまれているというのに、アンのことばがきっかけでこのような事態になってしまった言い訳を一切言わなかったのだ。ダイアナは、ジョセフィンおばさんの性格も知っていたし、覚悟を決めていた。

その情報を知っていたリンド夫人から聞かされたアンは、心の友の窮地を救うべく、すぐさまオーチャードスロープへ走り出し、ダイアナが、ジョセフィンおばさんがとても怖い人であることを伝えてもおくせず、客間へ向かって部屋をノックした。

アンは、あれは私が言い出したことで、ダイアナは普段はとてもおしとやかで、あんなことをするような人間ではないということと、ダイアナが得意な音楽の道を目指していることを閉ざされた時の辛さは想像に絶することだと熱弁して訴えかけたところ、そのアンの態度と話しぶりが気に入り、すべて笑って許してくれたのだ。アンと扉の外でそっと様子をうかがっていたダイアナと、手をとって喜び合った。ジョセフィンおばさんの顔は一転して穏やかになり、ダイアナにはブレスレットをプレゼントし、しばらく留まるから、アンに時々会いに来て一緒に過ごしてほしいと、とにかくアンはジョセフィンおばさんに気に入られたのだ。

ジョセフィンおばさんは、決して怖い人ではなく、普通にしつけられた常識ある態度を重んじる厳格な人であったのだが、見方によっては気持ちも変わるといい、アンの正直で友を思う態度が気に入ったのだ。

バーリー家では、ジョセフィンおばさんとともに、話したり遊んだり歌ったりと楽しいひと時を一か月以上も過ごし、ジョセフィンおばさんは、シャーロットタウンに来たら遊びに来るように言い、とっておきのベッドで寝かせてあげるよ!と別れ際にアンに出会えたことをうれしそうに笑顔で去っていった。